【5】雑誌 統合医療でがんに克つ 連載記事「生きる5」

生きることを諦めた一人の婦人がいた。以前の話です。肉眼的にがんを想わせる右乳房の腫脹を認めた。触診すると明らかに境界不規則で堅く皮膚表面の色も変わる程進行しておりました。
急いで手術を受けて戴きました。手術は成功し退院した話を聞き「良かったね」と喜んでおりましたところ3ヶ月後に帯下が多くなりましたと訴えて来院されました。検査結果は子宮頚癌の初期で上皮内癌でした。円錐切除する程度の進行で依頼した担当医から「もう心配ない」という電話を受けました。良かった、良かったと喜びあっておりましたところ、又まもなく左乳房が右乳房と同じ状態となり、再び摘除手術を受けることになりました。55歳、いつも大人しく口数の少ない方でしたので、一つの手術を終える度に「良かった」と夫の方と共に喜んでおりました。
ところがその後他の疾患で他界されてしまいました。暫くおいて御主人から以外な話をお聞き致しました。以前から御主人に「あなたより早く死にたいのよ」を繰り返し、本音で語っていたというのです。そして「だから自分が全部やってあげて(葬儀やその他整理)拝むようになっていたのかもしれない」と悲しみを秘めながらも静かに心境を語られました。
身近な人の死を受け入れることは難しく、殊に妻の場合は受容しにくいのではと思いつつ、お伺いしただけに落ち着いて語られる言葉に逆に深い愛と哀愁を覚えました。と同時に生前から仏教で謂う四苦(生老病死)を噛みしめておられたのかも知れないとも感じました。《生》を望まなくなった時、形を変えて(病・・・)《死》は忍び寄ってくるのかもしれないと非科学的と言われそうでありますが、つくづくと考えてしまいました。
しかし、勝手ながら私は念じています。一旦縁あって、この世に誕生したからには、例え精神的事情があったにしても《生への執着》を持って生きて欲しいと思うのです。それは、その他動・植物の命に対しても同じです。私はもともと産婦人科医であり沢山の分娩を取り扱い、分娩の時命をかけて頑張る母と新しい生命の誕生、最初の産声を聞き、そして喜ぶ家族の笑顔を忘れることは出来ません。
生まれたばかりの赤ちゃんにも既に癌遺伝子は存在し、発現するまでは自分の体にガンが同居しているなんて思い及びません。癌として診断されるまでには二桁の年数がかかるのだそうです。発癌の速度を速めるか、遅くするのか、発癌させずに済むのかは、やはりあなた自身に因ります。
色々な種類のがんの中には幼児の時期に発現するものもありますが平均的には身体の老化と共に発現しやすくなって参ります。アンチエイジング=抗老化(抗加齢)の考えでは誰しも老化はするものの(暦年齢)、《老化を病気の一つ》(老年科とは違います)と考えております。従って、老化を遅くする、若返りさせる、健康寿命でピンピンコロ、罹患した場合は各病気の個性を考え、患者に対してはなるべく免疫力を落とさず、持っている良い資質を保ちながら統合的に対応し、治療する目的のもとに学び実践する医学分野なのであります。
勿論《どうしたら病気に罹らないか》は最も考慮された目標であります。アーユルヴェーダの目標である《人生至福》に相通じるものがあります。古今東西を問わず、つまり人類は不老不死の夢をみながら科学的に、必然的、自然治癒的に夢の実現を目指して試行錯誤しているのです。あなたは何の癌で、どの程度進行していて嘆いているのでしょうか。今、医師はその人の癌の種類と進行度を述べ、治療方針を説明するでしょう。自分に対して最も良い方法を選択したいと思いつつ悩み迷うでしょう。これまで多くの方達にお会いして感じることは食欲減退・吐気・嘔吐を伴う・ひどい口内炎を起こすようながんの場合、身体の各部に痛みが走り睡眠を障害される方の場合は精神的に参る率が高いようです。
そして栄養状態も非常に悪くなってしまいます。
72歳の女性、吐血により胃ガンの診断を受けました。既に転移があり、原発巣も手術不能にまで増殖し、2w.前後の命と告げられました。他院での血液検査結果では「よく歩けますね」と言葉をかけた程の貧血と血清アルブミンの低下がありました。食欲がなく、全身に痛みが走り夜、何回も目覚めるという。この方は意識がしっかりしていて《生きる》強い望みを持っていました。主治医は末期ガンの対応として痛み止め(モルヒネ含有)を処方しておりました。当院ではQOL の手段として栄養の補給とビタミンC 高濃度点滴療法で補佐することにしました。
すでに吐血時輸血を受けた既往があり、家族から「○月○日までは絶対に生きていて欲しい」という条件付きがあったため、差し当たり輸血を受けるように勧めました。全身状態は良くなり、冷たい身体から暖かい身体に変わりました。痛み止めは服用せず、夜も良く眠ったそうです。痛み止めよりも全身状態をよくすることの重要さを改めて教えられた。
2w.前後と言われた命はQOL を得、日差しをみるような明るい表情になりました。栄養状態・一般状態を改善することがガン治療には最も大切な手段なので。
ガンの治療には保険適用になっているものには従来の手術・抗ガン剤・放射線治療が3本柱になっております。何故これらが保険適用になってくれないの?と思う治療法が自由診療には様々あります。大きな欠点は保険よりお金がかかる、そして保険診療以外のものは有効ではないという認識が強く残っている、殊に秋田では不況とも重なり、自由診療は「なるべく避けたい」意識が強い地域であると感じます。しかし、統合医療の立場で医療に携わっている者にとっては、なるべく早期ガンの時期から自由診療の良い治療に眼を向けて欲しいと願っています。併用することにより良い効果が得られるからなのです。なるべく体力(免疫力・抵抗力を含めて)を温存しているうちに、さらに免疫力をプラスするようになさった方が効果的とあなたも思いますでしょう。
64歳の男性の方は肺がんで手術不能と言われました。気持ちがおおらかで、来られる時だけという不定期なビタミンC 高濃度点滴療法希望の方です。患部への温熱療法を併用しました。「抗ガン剤をやったが負けなかった。CT で大きくなっていなかった。」淡々と語っておられます。一見気まぐれのようですが、これでも効果があったと気付きました。《やってみるという気持ち、治りたいという望み》は大変、大事な要因のようです。がんの研究は大変進みビタミンC 高濃度点滴療法以外にもアミグダリン点滴療法・遺伝子検査によるテーラーメード免疫療法・点滴と皮下・筋肉内注射・低用量ナルトレキソン療法・その他栄養療法との組み合わせ・・・と門戸が開かれて種々の治療が出来るようになりました。
是非、明るい気持ちでがんを克服して下さい。
「元気で百歳」という沢山の方達の手記文が載った本が送られてきました。目を通すと、なるほどポジティブ思考と信じる思いの実践をしている方達の手記です。中には生死をさ迷う病気から脱出してのち《生活を正して生きる》方の文も載っています。悩みと迷いの中から、いかに《希望的に》、あなたにあった《良質の生活スタイルと栄養のレシピ》の構想を練り、夢見た構想を完成させて身体がガンを忘れるようにしましょう。他の病気と同様、がんの回復にはトータルケアがとても大切なのです。


